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解読不能の書 ヴォイニッチ手稿はデタラメか (1)

cardengrille.jpg【Nature】この度、英キール大学のコンピューター学者ゴードン・ラグ氏が行った研究によれば、これまで1世紀以上に渡って科学者達の頭を悩ませ続けてきた解読不能の書ヴォイニッチ手稿は単なる良く出来たデタラメである、という結論に至ったという。ゴードン氏は今回の研究に当たり、ヴォイニッチ手稿が作られたと思われる16世紀のカルデングリルと呼ばれる暗号作成技術を用いて同書を徹底的に検証、結果、同書の謎をほぼ解明し、また、ヴォイニッチ手稿を奇人皇帝ルドルフ2世(錬金術に多大な興味を抱いた神聖ローマ皇帝)に売りつけた男 - つまりその著者 - は中世の魔術師エドワード・ケリーなのではないかと結論したのである。

ヴォイニッチ手稿の研究家でもある中世研究学者フィリップ・ニール氏はゴードン氏の研究を受けて、「妥当性はあるが、決定的なものではない。ただし、非常に優れた仕事であることは確かだ。私自身の見解としては、ヴォイニッチ手稿にはなんらかの意味があると思うが、確かに可能性は低いかもしれない。」と語る。

ヴォイニッチ手稿は「世界で最も不可解な書」と言われている。同書は250ページにわたって、世界に例のない謎の文字で記述され、そして未知の植物や妖精、天文学図形などの挿絵を含む。

同書は1500年の終わりごろにプラハを訪れたルドルフ2世がどこかから600ダカット(現在にして550万円程度の価値)で入手、その後同書は貴族や学者などのもとを転々として、17世紀に一旦歴史上からその姿を消すのである。

そして時は流れて1912年、アメリカの古書商ウィルフリッド・ヴォイニッチ氏が同書をイタリアの寺院で発見、購入してアメリカに持ち帰り、ヴォイニッチ氏の
死後はイェール大学に寄贈、保存されている。

これまで多くの学者がヴォイニッチ手稿の解読に挑戦しているが、余りにも奇抜な文字で書かれた同書は未だにその解読を拒否し続けているのである。しかし、一方では同書を単なる良く出来たイタズラであるとする見解も多いのである。それにはいくつかの理由がある。

まず同書の文法は他のどの言語とも違う奇妙な特徴を持っている。例としては、非常に出現頻度の高い単語が連続して現れる事が挙げられる。英語で言うならば、「and and and」、日本語で言うならば「そして そして そして」といった具合である。また、もうひとつには単語の長さ、そして単語内に現れる母音と思しき文字の出現位置が現存する様々な言語と非常に似ているという事があげられている。その事実はつまり既存の言語を適当にデタラメな文字で置き換えた捏造言語である可能性を示唆するのである。

「これまでもデタラメだという意見はあったけども、作り物にしては良く出来すぎている、と言われてきた。じゃあ、例えばどこかの名もない中世の狂った錬金術師が何十年も掛けてやっと作り出したのか?そんな事はありえない、っていう風にね。」ゴードン氏は語る。

しかし、ゴードン氏は今回、この難解な文字列を容易に生成する「カルダングリル」と呼ばれる中世の暗号生成表(写真)を作成したのである。表は文字が書かれたチャートの上で穴が開いたカードを移動し、文字列を生成する。そしてこの表を使えば必ず異なる長さの単語が生まれるという。

そして今回ゴードン氏はヴォイニッチ手稿で使われているほぼ全ての文字をこの表に割り当て、カードを移動して単語を生成したのである。結果、凡そ3ヶ月もあれば、ヴォイニッチ手稿に書かれた程度の分量の文章は生成出来ることを確かめたのである。

「非常に興味深い見解だ。まだこれでもって結論、という訳にはいかないだろうけどね。この試論を確かめるには、カルデングリルを用いて全文書を本当に生成できるか証明する必要があるだろう。」プログラマーで暗号研究家のニック・ペリング氏は語る。しかしゴードン氏は、今後カルデングリル内の文字列位置を調整すれば、必ず証明することができるだろう、と述べている。

ヴォイニッチ手稿はあたかも解読を拒否しているように見える。著者はおそらく暗号について熟知しており、まるで読者 - というよりは解読者 - に向けて強烈な挑戦状を叩きつけているかのようにすら思えるのである。

文字は難解な相互参照を含み、大きさすら判読できない文字は曖昧さを極める。想像力を掻き立てる神秘的な裸の挿絵は、その実、解読者が衣装から時代考証することすら許さないのである。

そして更に、ゴードン氏はこのカルデングリルを使いヴォイニッチ・マニュスクリプトを書著した者は中世の魔術師エドワード・ケリーであると結論づけている。16世紀に実在したエドワード・ケリーは錬金術師として知られるが、他にも偽造専門家、神秘主義者、傭兵、探検家、と多数の肩書きを持つ謎の多い人物である。しかし記録によれば1584年、ケリーはルドルフ2世に謁見する為にプラハに旅行しているという。そしてゴードン氏によれば、その時に「三ヶ月かけて捏造した」ヴォイニッチ手稿を高値でルドルフ2世に売りつけたのではないかと推測しているのである。しかし、エドワード・ケリーは16世紀に終わり刑務所に入れられ、後に脱獄、そこから彼の足跡は歴史から姿を消している。

「もしこれが本当にデタラメだったとしたら、エドワード・ケリーが著者候補だというのは間違いないと思う。実際、ルドルフ2世はヴォイニッチ手稿なんかよりずっと酷いうそっぱちの錬金術本をたくさん買い集めていたし、いずれにしても相当だまされやすいやつだった事は確かなようだ。でももしヴォイニッチ手稿が本当にケリーによるデタラメだったとしたら、ちょっと良く出来すぎのように見えるんだけどね。」フィリップ氏は語った。

【参考】エドワード・ケリー : 魔術人名録目次 より
ルネサンス期の宮廷と錬金術 : bibliotheca hermeticaより
魔術の帝王ルドルフ2世 | ルドルフ2世の動物園 | ジョン・ディー

※他、ヴォイニッチ手稿の参考リンクは関連記事へ(コメント欄も参考に)

【関連】解読不能の書 ヴォイニッチ手稿の謎
- 解読不能の書 ヴォイニッチ手稿はデタラメか (2)

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COMMENTS (2)
1.  匿名  2004/09/03 04:00:51 [RES↓] [TOP↑]

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2.  匿名  2005/07/24 13:07:37 [RES↓] [TOP↑]

ヴォイニッチ手稿自体知らなかった。。。
一つ勉強になったけど デタラメだったなんて。。。

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