死体写真家、釣崎清隆氏が活動を始めたのは1994年に遡る。90年代のいわゆる"悪趣味"ブームを代表するエログロ雑誌、『TOO NEGATIVE(トゥ・ネガティヴ)』を刊行しようとしていた編集者、小林小太郎と出会った釣崎氏は、小林の薦めるままにタイへ。しかしそこで目の当たりにした死体に"目が眩んだ"釣崎氏は、以後死体写真家として本格的な活動をスタート。これまでコロンビア、メキシコ、ロシア、パレスチナなどの世界の危険地帯で死体写真を1000体以上撮り続け、今では"世界で最も死の現場に立ち会っているアーティスト"として世界的にその名を知られている。
以下は、今月27日、過去13年に及ぶ活動の集大成的ドキュメンタリー作品『ジャンクフィルム(JUNKFILMS)』(販売アップリンク)を発表した、釣崎氏へのインタビューである。実に4時間に及んだインタビューは、各国の死体文化を軸に、戦場カメラマンの実情、キルリアン写真、クラブきっず事件、ピーター・ウィトキン、メイプルソープ裁判、食人族、Ogrish.com、猥褻規制など様々なテーマを含む、膨大かつ興味深いものとなった。
※以下本稿内の写真は、全て釣崎氏の『ジャンクフィルム』より。画像をクリックすると、それぞれ拡大されます。
── 釣崎さん(写真)は死体を撮影するために、世界中の危険地域ばかり選んで取材されてますが、いっそ戦場カメラマンになろうと思ったことはないんですか?
釣崎 まったくないね。そりゃ、戦場にも行くよ。でも死体を撮るっていう意味では、戦場は効率がそんなに良くないんだよ。
── それは、危なすぎて現場に行けないという理由ですか?
釣崎 まあそういう部分もあるけど、基本的に戦場っていうのは暇な場所なんだよ。
── 暇なんですか。戦場と言えば、普通、弾丸が飛び交ってるイメージがありますが。
釣崎 もちろん弾丸が飛び交うから戦場なんだけどね。そうなるまでに何ヶ月も待たないと行けないことだってあるから。911の後のベツレヘムを取材したときなんか、そりゃもう夜も眠れないくらいうるさくて、24時間体勢でドンパチやってたけどね。
── それでも死体はないんですか。
釣崎 死体、ないね。1日5人くらい。昼夜なく市街戦でガンガンやっててもそんなもんだったりする。そりゃクラスター爆弾とかさ、化学兵器とか大量破壊兵器が使われれば一気に何百、何千人と死ぬわけだけど、それが50km先の町だとか聞いて必死こいて現場に駆けつけても、到着したときにはもうすっかり遺体が片付けられてたりする。まあ移動は基本的にするもんじゃないよね。とにかく戦闘が散発的に起こるからさ、遠く離れた国でニュースで見てる分には、戦闘が間断なく続いてるように見えるんだけど、現地にいると、一発ドカーンってあったら、それっきり一週間銃声も聞かないとか、そんな感じだからね。