【sptimes】この程、ロシアの数学者と海洋学者との共同研究により、旧約聖書に伝えられるモーゼの奇蹟 - いかにしてモーゼが紅海を切り開き、ユダヤの民と共にエジプトから逃れたか - が明らかにされたとのこと。旧約聖書によれば、モーゼが率いるユダヤの民は分断された海水の中から現れた海底を歩いて紅海を渡り切り、その後に続いたエジプトの兵士達は元に戻った海の中に飲まれ、多数の兵士が溺れ死んだと記述されている。「今回の研究ではユダヤの民が海を渡って歩き始めたと言われている地点から、紅海の北側まで伸びる暗礁に注目した。聖書に描かれている時代では、暗礁は今よりも大分海面に近かったんだ。」研究を行った数学者ナウム・ヴォルジンガー氏は語った。今回の研究は6ヶ月を要し、作業はほぼ全て数学的な計算に終始したという。そして、この程ようやくその成果が「出エジプト記における流体力学状況のモデリング」という論文にまとめられ、ロシア科学院の広報誌上に発表されたのである。「論文は凡そ専門的な用語ばかりだね。ほぼ全て微分方程式で解き明かしたよ。」ナウム氏は語った。(写真は映画「十戒」より)
ナウム氏が語る通り、論文はこれまでの議論のような宗教的な視点を一切含まない極めて科学的な内容であり、論点は、とにかくそれが実際に起こったとして、ではいかにして波が分けられたのか、という一点に絞られている。ナウム氏が注目した問題は、まず暗礁が海面上に現れるにはどのくらい激しい嵐が必要だったか、そしてどのくらいの時間、暗礁が海面上に露出していたのか、どのくらい経った後、海水が再び暗礁を覆ったか、といった問題である。
「暗礁は海面上に現れるには、風が一晩中、風速30mの速度で吹き荒れていたと仮定する必要がある。それに加えてその時、ユダヤの民は60万人はいたと言われているから、7kmの暗礁を全員が歩いて紅海を渡るのには大体4時間はかかっただろう。そしてその後30分程で海水は元に戻ったと考えられる。」ナウム氏は語った。
そして数学者であるナウム氏は、ロシア科学院の海洋学者アレクセイ・アンドロソフ氏の協力を得て、海洋における氾濫や津波と言った現象を数学的に解析し、研究を進めたのである。
ナウム氏が研究するこのモーゼの奇蹟はシェマ(1日3度復誦されるユダヤにおいて唯一神を崇める重要なお祈り)の中に今でも残っている。サンクトペテルブルグでユダヤ人コミュニティーの代表を務めるマーク・グルバーグ氏はこの奇蹟がユダヤ人にとっていかに重要な事であるかを説明した。
「ユダヤの民は、歴史上初の一神教国家を作った民族ですが、やがてエジプトに奴隷として連行され、苦難の時を迎えるわけです。しかし、そのような時に神はユダヤの民を約束の地へ必ず誘うと告げられた。だからこそ、この出来事はユダヤの民族にとって非常に重要な意味を持つわけです。そしていざユダヤの民がエジプトを脱出し、紅海まで辿り着いて立ち往生したとき、彼らがその苦難を乗り越えるには奇蹟が必要だったのです。そして約束どおり、彼らの神への強い忠誠への見返りとして、奇蹟が起こったと考えているわけです。その一神教から生まれたシェマは現在まで生きているのはそういう理由からでしょう。」グルバーグ氏は語った。
この余りにも信じがたい「海の分断」という出来事はこれまでも長年に渡り、多くの人々の想像力をかきたててきた。例えば、中世の哲学者トマス・アクィナスもこの出来事を可能であると、自著に記している。そして現在でも世界中の学者達がこの出来事が本当に可能であるか、その可能性を巡り多くの議論がなされてきたのである。しかし、今回ナウム氏とアンドロソフ氏行った研究は、そうした可能性について「それが可能であるかどうか」という抽象的な議論ではなく、「とにかく事実である」と仮定して、ではそれがどのように起こりえたか、その一点に絞って研究が進められたのである。
「我々は徹底してアイザック・ニュートンと同じ視点、つまり徹底した科学的な視点からこの出来事に向き合った。私は、神が物理の法則を通してこの世界を支配していると考えているからね。」ナウム氏はやや冗談めかして語った。そして更に「ユダヤの民がその歴史的使命を果たすには、彼らは何としてでもエジプトから逃れなければならなかったんだ。」と付け加えた。
「実際、このモーゼの奇蹟が、ユダヤ人の建国にも強い影響を与えている事は確かです。ユダヤ民族はその民族の歴史と苦難の歩みを強く信じているのです。」グルバーグ氏は語った。
そして出エジプト記によれば、辛うじてエジプトから逃れたユダヤの民は紅海を前にして、4つに分裂するのである。1つ目のグループは奴隷という扱いにも関わらず、極度の空腹からエジプトに帰ろうとした。そして2つ目のグループは追跡する敵と戦う事を望んだ。そして3つ目のグループはただ祈るべきだとした。そして最後の4つ目のグループはただ、信じた。私たちはこの紅海を渡れるはずである、何故ならば神がそう告げたからであると。
「このエピソードから学ぶべきところは非常に多いのです。我々ユダヤの人々がいかに神を信じているか。そして奴隷という恐怖を忘れて、あるいは克服して、神の声に耳を傾け、一切の疑いを持たずに神に従う事ができるのかという事が端的に現れているのです。だから当然のこととして、我々にとって紅海の分割という出来事は事実としての奇蹟以外の何物でもありません。」グルバーグ氏は語った。
ナウム氏は現在、今回の発見をまだいずれの宗教団体にも連絡しておらず、またそうした団体からの反応は一切受けていないという。
また、ナウム氏は、この紅海の分断は今後は二度と起こらないだろうと話している。現在では既に暗礁部が船の航路を作る理由から分断されており、また出エジプト記に描かれる時代よりもはるかに水深が深くなっているからである。「もしまた分断が起こるとしたら、それは出エジプトの時とは違う奇蹟だろうね。」ナウム氏は語った。
【参考】出エジプトの道をたどる | シオニズムとクリスチャン | 忠布.com : 出エジプト記より
主は夜もすがら激しい東風をもって海を押し返されたので、海は乾いた地に変わり、水は分かれた。イスラエルの人々は海の中の乾いた所を進んで行き、水は彼らの右と左に壁のようになった。
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