【Telegraph】地球最後の石器文明を維持するインドの島に、漁師二人が船で漂着し、矢で射られて死亡したとのこと。漁師を殺害したセンティネル族は、現在人口50人から200人と言われ、未だに現代文明との接触を拒否し、独特の生活を続けている部族である。彼等の島に近づくものは、船であれ、ヘリコプターであれ、矢のシャワーが降り注ぐという。彼らは新石器時代以前の文明を維持する現存する唯一の部族であると言われており、2004年の津波の際には、その生存状況を巡る報道がなされた事は記憶に新しい(彼等はいかにしてか災害を事前に察知し、ほとんど被害者を出さなかったといわれる)。
殺された二人の漁師、スンダー・ラジュ(48)とパンディット・ティワリ(52)は、今年1月25日、アンダマンーニコバル群島内に位置する、北センティネル島沖合いでカニの密漁を行っていた。同僚の漁師によれば、二人はその深夜、錨を下ろして海上に停泊したまま、泥酔して眠りに落ちたという。しかしその後、岩とロープで作られた錨が何らかのはずみで外れ、船は島の方へと流されてしまったのである。
「事件当時、漂流する船に気づいた同僚の漁師らが、眠っている彼等に向かって、危ない!と叫んだそうです。しかしおそらく泥酔していたんでしょう、彼等は気づかなかったんです。そしてボートは浅瀬に漂着し、そこで殺されたんです。」アンダマン・ニコバル環境委員会会長のサミル・アチャリャ氏はそう語っている。
その後遺族からの連絡を受け、インド沿岸警備隊は遺体の回収に向かったが、そこでヘリを待ち受けていたのは、やはり地上から放たれる矢の雨だったのである。ヘリから撮影された写真には、半裸の部族男性が煙幕を張るために火を付けた様子が映し出されている(しかしヘリのローターから出る下降気流によってその煙は除かれた)。また地元周辺では彼等部族がカニバリズム(人肉食)を行っているという噂さえしばし流れていたが、二人の漁師は浅瀬に埋葬されているのがはっきりと写っている。
アチャヤ氏は、彼等センティネル族について、カニバリズムが日常的に行われているといった噂がまことしやかに囁かれているが、それはもともと他の部族で行われていた風習が元になり、一人歩きしたものであると話している。例えばオンゲと呼ばれる部族においては、仲間の誰かが死ぬと、その遺体を切り刻んで焼くという風習が行われている。それは遺体に悪霊が取り憑くのを避けるためであるという。
「炎で肉を焼くのを見て、それがカニバリズムであると誤解されているわけですが、今回の出来事は明らかにそれら噂の反証となるものです。」
また現在、ひとまず遺体の回収は断念し、今後の機会を見て再チャレンジする予定であるとアンダマン諸島警察署長のダルメンドラ・クマール氏は話している。
「今強行すれば、双方に死者が出る可能性があります。彼等部族の人口はそう多くはないですから、今後彼等が逆の島端に移動するのを待って、隙を見計らって侵入し、遺体を回収したいと思っています。」
しかしまた、今回の一件を巡り、環境保護グループからは島の周囲三マイル四方に渡る立ち入り禁止区域を尊重し、遺体はそのまま放置しておくべきであるという意見も上がっているという。
1980年代から1990年代の初頭にかけては、難破船の救助にきた武装救助隊によってセンティネル族の数多くが殺害されたという過去もあるが、現在では、彼等の島は比較的平穏を保ち続けている。また少し前には、同島付近に暮らすジャラワ族(彼等は1997年に初めて外界と接触をもった)のDNA鑑定が行われた結果、彼ら民族のルーツは6万年前にアフリカから移住してきたグループであることが明らかにされたという。しかしまた、彼等ジャラワ族は外界と接触を持って以来、性的搾取、アルコール中毒やハシカの蔓延といった幾多の困難に見舞われたため、センチネル族を無理に外部と接触させることは避けるべきであるとする論調が現在では強いとのこと。
【参考】世界民族博覧会 - World Ethnic Exhibition | アンダマン諸島のセンティネル族
【参考2】現生人類、6万数千年前にインド洋沿いにアジア・オセアニアに一度に急速に拡散
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