人類最古の飼い猫 キプロス

【BBC】キプロスにておそらく人類最古のペットの猫が発掘されたとのこと。これまでの学説では紀元前2,000年〜1,900年頃、エジプトで猫がペットとして飼われていたことが明らかになっているが、今回発掘された猫は凡そ9,500年前のもので、これまでの学説を大きく覆すものとなる。発掘を行ったフランスの研究チームによれば、今回のこのキプロスはシロウロカンボス遺跡は、新石器時代もしくは石器時代後期、紀元前8,000年から9,000年頃の人類の居住遺跡で、今回の発見はその時代から人類が既に猫をペットとして手なずけていたことを示唆する重要な証拠になると話している。「我々が今回発見したこの猫はひょっとしたら、人が猫を飼いならすという習慣以前のものかもしれません。例えば、野生と家畜の中間のような存在ですね。しかしながら、この猫が実際に"飼われていた"という可能性は十分に考えられると思います。」発掘に当たった仏トゥールーズのCNRS考古学研究所のジャン・ギュレン博士は語った。(写真左は人骨、右が猫の骨)

「現在の我々のような猫と人間の関係はさることながら、犬と人間の関係は更に古いものであると言われています。最古のものでは紀元前11,000年から12,000年のイスラエルのナトゥフ文化の遺跡からそうした証拠が発見されています。」

今回発掘された猫の骨は人骨が埋葬されていた場所から凡そ40cm離れた場所に埋葬されていたが、遺体の保存状況、位置関係などから人間と猫はおそらく一緒に埋葬されたものであると考えられるという。また発見された人骨は性別不明、30歳前後の人のものであることが明らかになっており、研磨された石、斧、火打石、黄土顔料などが一緒に埋められていたと話している。

また更に、これまでの調査で埋められていた人骨はおそらく高位の人物のものであり、猫と特殊な関係にあった人物のものであると推測でき、キプロスの同遺跡において猫が何らかの宗教的重要性を持った存在であった可能性も推測できるとしている。

「猫が宗教的な動物であったと決めつけることは確かに難しいかもしれません。しかし、その時代のその世界において、猫が何らかの象徴的、あるいは記号的な役割を果たしていたことは確かに有り得るかもしれません。」

またもう一つの仮説としては新石器時代、中近東地域から農耕が広まり始め、穀物が保管されるようになるにつれて、ネズミが爆発的に増加したために、穀物庫の番人役として猫が村の中で重宝されたたかもしれないと、博士は話している。

「もしもその仮説が正しければ、ネズミが現れるのとほぼ同時に、猫を飼いならすようになったということが言えるかもせいれませんね。実際にその地域にネズミが現れ始めたのは凡そ今から12,000年前であると言われています。」パリ自然史博物館のジャン・デニス博士は語った。

また今回発掘された猫は年齢凡そ8ヶ月で、おそらくはその側の人間が死亡した際に、一緒に殺されて埋められたものであると推測できると話している。しかし、遺骸からは屠殺された形跡が見られないため、埋められていた猫はおそらく人間と同様に扱われていたことを示唆しているという。しかしまた、同時代の同地域の遺跡からは人間がそうした動物を食べていたという跡も発見されているということも博士は付け加えている。

また今回発見された猫は現代の猫よりも身体の大きいアフリカ山猫（Felis silvestris lybica）の種類に似ているものの、キプロスには元々は猫がいなかった為、おそらく人間の手によって運ばれてきたものに違いないと博士は話している。

【参考】猫の文化史：イエネコの祖先 | イヌの起源・その１・一万二千年の時を越えて | 関西おもしろ文化考｜ペット | 古代エジプトの猫崇拝