寄生的頭蓋結合の幼児、史上初の分離手術へ

【nbc6】ドミニカで誕生した世界でも非常に稀な奇形症状に苦しむ幼児を救うため、国際的なボランティア医師団が結成され、来月、手術を行う予定であるとのこと。先月半ば、ドミニカの首都サントドミンゴで誕生したレベッカ・マルチネスちゃんは頭部に未発達の双子の顔が腫瘍のような形で存在しているのである。現在レベッカちゃんは至って健康であるものの、今後成長していく上でそのもう一つの頭が彼女の脳の成長の妨げになる事は必至であり、医師らの提案もあって今回手術が行われることになったという。

手術が行われる予定である米非営利団体CURE国際医療センターの整形外科医サンティアゴ・ハシム医師は、レベッカちゃんが苦しむ寄生的頭蓋結合という症状はこれまで世界でも8件しか前例のない非常に稀な奇形症状であり、また同医療センターでも初めての手術になるだろう、と電話のインタビューで話している。

一般的な結合性双生児とは一卵性双生児が双子へと分割される段階でなんらかの原因でその分割が停止し、結合した状態のまま誕生してしまうケースである。しかし、今回の寄生的頭蓋結合は割合にして250万分の1、また結合性双生児の中でも凡そ2%という非常に稀なものなのである。

このような「寄生的」な双生というケースは、母親の子宮内で双子のうち一方の成長が途中で停止し、もう一方の双子に手や胴体、あるいは頭のみという形でもう一方の成長した双子の体に合体して誕生するというものである。

レベッカちゃんの症状は、彼女の頭蓋骨に開いた溝にもう一方の頭部が結合される状態で存在しており、内部には血管が通っている。またその頭にはレベッカちゃんの毛に混ざる形で産毛が生え、表情などはない未発達な状態で顔らしきものの原型が形成されているという。

「レベッカちゃんは今では体重4.5kgまで成長（誕生時は3kg）しているが、もう一方の頭が栄養分を吸収していて、レベッカちゃんの脳に良くない影響を与えているんだ。ただ、彼女は生まれた時から体重も正常だったし、すぐに退院することが出来た。よく泣くし、普通の子供と全く同じだよ。」ハシム医師は語った。

また今週末には今回の医師団を率いる予定であるUCLAマテル小児病院の脳神経外科医ホルヘ・ラザレフ氏が他の医師らと共にサントドミンゴ入りし、レベッカちゃんの両親と話し合った上で最終的な決定をするという。ラザレフ医師は2002年にも頭部結合性双生児の分割手術を成功させているベテランである。

「我々の見解としては、何としても手術を行わなければならないと思っている。しかし、今後本当に手術を行うかどうかは、もう一度話し合ってから決めなければならないだろう。」ラザレフ氏は語った。

手術はそれぞれ9人のボランティアからなる医師チーム2つが交代で行う形で、12時間以上に及ぶ長期手術になる予定であるという。また目下一番大きな問題は、レベッカちゃんの頭蓋骨を閉じる際、体内の他の部位の骨で埋め合わせるか、あるいは後にドナーバンクから探すか、金属板を用いるかという点である。

「こればかりは今後我々が何を見つけるか、それによると思う。今回のようなケースを文献中に探したが、とうとう前例は見つからなかった。おそらくこれは史上初のケースになるのだと思う。」ナザレフ氏は語った。

またもうひとつの問題として彼女の両親マリアさんとフランクリンさんの収入は現在月2万円程度である為、医療費を支払う事が出来かったのである。しかし、今回、医師らは手術をあくまでもボランティアとして行う事を決定しており、また、手術は発展途上国で病気に苦しむ子供たちの医療を支援する米ペンシルバニアの非営利団体CURE国際医療センターにて行われる事になり、ようやく手術を行えるところまでこぎつけたのである。レベッカちゃんの手術は予定通りに行けば、来月の6日、もしくは7日に行われる予定であるとのこと。

【参考】染色体・遺伝子・発生の異常‐病理学

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