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娯楽殺人映像 - スナッフ・フィルムは実在するか

1980 - 90 : スナッフ・フィルムからスナッフ・ビデオへ

1980 年代中頃から90年代にかけて、ホームビデオやビデオカメラ(8mmビデオ)がいよいよ一般に普及しはじめると、それまで人々が想定してきたスナッフ・フィルムの在り方は根本から揺らぐことになる。何故ならば、もはやスナッフは何も大がかりな設備・資金を必要とする"フィルム"である必要はない。ビデオカメラの発達と低価格化はスナッフの"制作現場"が専門的技術を持つ、映画プロダクションから、アマチュアの手に委ねられることを意味したからである。

事実、80年代後半以降は、上述のような映画やそれに付随したスナッフ・フィルム騒ぎは減少し、むしろ猟奇殺人事件との関連性の中でスナッフ・フィルムが語られるケースが端的に増加した。"スナッフ・フィルム"に代わり、"スナッフ・ビデオ"という言い方が広まったのもおそらくこの頃からで、それはその時代のメディア(媒体)それ自体が、スナッフの在り方を規定してきた事を裏付けていると言える。

猟奇殺人者たちの"ホームビデオ"

sfilm12.jpgこの時代、全米各地では様々な猟奇殺人事件が発生したが、スナッフ・フィルムと関係したもので最も有名な事件は、レオナード・レイク(Leonard Lake)とチャールズ・イング(Charles Ng)が引き起こした連続殺人事件である。1985年、二人はサンフランシスコの雑貨店で、万引きをしていたところを警察に逮捕された。しかしチャールズは警官を撃って現場から姿をくらまし、逮捕されたレイクも取調中に青酸カリを飲んで自殺したため、捜査はレイクの元妻に及んだ。元妻の証言から、山奥にある一軒屋の存在が発覚し、警察が踏み込むと、そこは想像を絶する世界だった。本棚で巧妙に隠された隠し部屋があり、その中には"まるで"スナッフ映画の舞台のような"手枷、足枷のついたベッドや、数々の拷問器具が陳列されていたのである。

部屋からは、そこで殺害されたと思しき女性の写真や、拷問中の様子を納めたビデオテープが多数発見され、小屋の外からは相当数の人骨が発見された。こうした事実から、新聞はあらゆる推測を書き立てた。それは例えば「二人はスナッフ・フィルムを制作し、チャールズが香港に輸出していた」といった根も葉もないものである。その後、逃亡していたチャールズがカナダで逮捕され、米国に身柄が引き渡されると、ビデオに関わっていたのはレイクであり、自分は知らない、と主張した。確かにチャールズはビデオの中で女性を虐待してこそいたが、殺人の際までを納めたビデオはとうとう発見されなかったのである。

sfilm13.jpgまた他に有名な殺人犯としては、カナダのオンタリオ南部で、夫のポール・ベルナルドと共謀して少女を誘拐し、虐待、惨殺したカーラ・ホモルカ(女性)がいる。1992年の逮捕時、ホモルカとベルナルドが撮影したビデオが大量に押収され、夫婦で惨殺を行った珍しくもおぞましい事件として注目を集めた。押収されたビデオには、少女二人がそれぞれ二週間に渡って、性的奴隷として虐待される様子が記録されていたため、裁判では"スナッフ・フィルム"として記録された。厳密には、殺害のシーンは撮影されていないことから、それがスナッフ・フィルムであるとは言い難いにも関わらずである(※8)。

※8. 近年では、ネットで「食べられたい人」を募集し、応募してきた男を実際に殺して食べたアーミン・メイウェスの逮捕時にもやはり"食人殺害ビデオ"の噂が流れた。
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生中継される死

sfilm22.jpg一方、この時期には、スナッフ映画の衰退に呼応するように、テレビ放送中に死亡・他殺が発生する事件もしばしば起きている。特に有名な事件としては1987年8月16日、米ペンシルヴァニア州財務局長のR.バド・ドワイヤーの拳銃自殺である。その前月、収賄容疑で有罪判決を受けたドワイヤーは、記者会見を開いて無実を主張した。そして一通りの発表を終えると、記者団が見守るその中で、おもむろに手に封筒の中から 44マグナムを取り出したのである。会場は騒然とし、「止めろ!」「早まるな!」といった声が飛ぶなか、ドワイヤーは冷静に銃口を加え、そのままあっけなく自殺したのだった。脳みそが吹き飛び、鼻から多量の血を流し続けるドワイヤーの姿は、間もなく、全米にテレビ放映された(※9)。

これらの事件が語ることは、即ち、もはやかつては禁忌とされた - 故に渇望された - "死の映像"、それは映画館の中で目にする非日常の映像ではなくなった、ということにつきる。かつて衝撃をもって迎えられた"死の映像"は、お茶の間にさえ、暴力的に現前しうる日常へと変貌したのである。そしてその背景にあるのは、映像記録メディアの急速な発達と普及、すなわち撮影機会の端的な増加にあることは疑いようがない。

- Budd Dwyer Suicide - Google Video

※9.1973年には、クリスティーン・チュバック(Christine Chubbuck)というWXLT(米ローカルテレビ局)の女性アナウンサーがニュースキャスト中にやはり拳銃自殺を遂げている(ただしこの事件については謎が多く、映像はすぐに警察に押収され、未だ公開されていない)。また他にも、生中継の最中に、離婚した男(エミリオ・ヌネツ)がカメラの目の前で元妻を銃殺した事件が有名である。一方、日本でもこの時期、豊田商事会長の永野一男がマスコミの見守る中、自宅で刺殺され、その一部始終が放送されるという事件が起きている。
- YouTube - shot his wife to death on tv
- YouTube - 豊田商事永野一男会長刺殺事件

スナッフ・フィルムの現在 - 携帯電話とテロリスト

sfilm14.jpg今世紀以降、最も世間の関心を集めた"死の映像"と言えば、やはり中東テロ組織による人質の斬首映像である。これらの映像では、それまでスナッフ的作品が決して超えることのなかった"撮影の為の殺人"が堂々と行われている点で、その衝撃は従来とは比較にならない。そしてこれら映像が何より特徴的なのは、決して地下を経由することなどなく、堂々と、インターネットの掲示板やファイル・アップロードサイトを通じて、世界的に頒布される点にある。かつてのスナッフ映画や衝撃映像を遙かに上回る過激な映像が、従来よりも遥かに手軽な、誰にでもアクセス出来る形で配信されているのである。

携帯電話で盗撮されたサダム・フセインの死

sfilm15.jpg中でも最も象徴的な事件は、2006 年12月30日に執行されたフセイン大統領の絞首刑映像の流出事件であろう。CNNやアルジャジーラを始め、各国の放送局はこの処刑の放送を自粛(断念)したが、それは処刑の数時間後、意外な、というより極めてもっともらしい形で世に現われた。フセインが処刑台に立ち、首を吊って死に至るその一部始終を納めたビデオは、立合った護衛が自分の携帯電話で盗撮し、ネットを通じて広めたものだったのだ。後にイラク政府はこの盗撮事件を重く見、盗撮に関与した護衛らを処分したが、世界のビデオサイトにアップロードされたその映像の流出を食い止めることは、もはや誰の手にも不可能だった。

1963年、日米間初の衛星中継となったジョン・F・ケネディの暗殺事件は、その映像(ザプルーダー・フィルム)が全て公開されるまでに、10年以上の時間を要した。しかし今世紀、全世界的に注目された歴史的人物の死が、死後数時間後に、現場に居合わせた人間によって、かくも手軽な形で世界に公開されたわけである。中東の"テロリスト"、そして"携帯電話"という二つのキーワードを通じて生まれたこの映像は、時代とともに変遷してきたスナッフ的な映像の現在のあり方を、端的に暗示していたと言える。

ただしこれら映像が果たして従来的な意味におけるスナッフ・フィルムかといえば、もちろん一考の余地がある。なぜならばスナッフ・フィルムはあくまで娯楽目的でなければならず、政治プロパガンダを目的としたこれらの映像はその過激さこそ同質(あるいはそれ以上)であれ、意味的には異なるからである(これらの映像を娯楽として楽しむ人々がいることは事実としても)。

- Full Saddam Execution Video Leaked from Cellphone
- YouTube - JFK zapruder-stable

ハッピー・スラッピング - 娯楽としての暴力

sfilm17.jpg一方、近年では先進国の都市からも、携帯電話を通じた新たな"娯楽目的の暴力映像"が生まれている。 2004年頃から、英ロンドンで社会問題化したハッピー・スラッピングというティーンエイジャーの"遊び"がそれである。ハッピー・スラッピングとは、" イタズラとして無作為に行われる暴力"で、町の中やバス、電車の中で、全く無作為に人を選び、暴力をしかける行為を意味する。多くの場合はグループで行われ、一人もしくは数名の実行者が通りがかりの通行人等を殴り、そのリアクションと一部始終を別の者が携帯電話のカメラで納め、友人達の間でシェアして楽しむ事だけを目的としている。

sfilm16.jpgはじめのうち、ハッピー・スラッピングの多くはふざけ半分の暴力(後ろから頭をはたく、すれ違いざまにひっぱたくといった軽いもの)だったが、その"面白さ"を競いあううち、徐々にエスカレートし、やがて鈍器で人を殴る、人を殴り倒してリンチする、といった過激な" 遊び"に走るものまで現われた(※10)。そして2004年10月には、とうとう女子を含むティーンエイジャー四人が無作為に襲った37歳の一般市民を殺害するという事件が発生したのである(写真は事件当時のリンチの様子。手前の女の子が携帯電話で撮影しているのが分かる。ちなみにこの映像を撮影していたのは、無人の防犯カメラで、それもまた示唆的である)。

sfilm18.jpgこれら映像は多くの場合、主に友人間で自慢、楽しむことだけを目的としているため、画質の低い携帯電話で撮影されることが通例となっている(ネット上のHappy Slapping映像の多くが荒いのはそのため)。しかし一部では、それら映像がインターネットで販売されているといった報道もあるため(※11)、商用かつ撮影(娯楽)目的に、そして何の政治性もなしに暴力が行われるという意味では、中東のそれよりもむしろ、本来想定されたスナッフ・フィルムの在り方には極めて近い。

従って、いつか笑顔で殺人が行われる瞬間を携帯電話が捉え、それがネットを通じて匿名的に販売されるのはもはやモラルの問題ではなく、技術=時間の問題なのかもしれない。つまりこの時点にあっては、娯楽目的の殺人映像、もはやその有無が伝説なのではなく、販売チャネルの有無こそがスナッフがかろうじて都市伝説たりえる、最後の砦だとも言える。

※10.ビルの高層階から野良猫を投げ落として楽しむといった動物虐待パターンもある。ちなみに動物のスナッフ・フィルム自体はとっくに成立しており、動物を殺害するビデオが販売され、米国や英国、中国など各国で問題化している。他には英国でティーンエイジャー数名が11歳の少女がレイプし、その様子を携帯電話で撮影、逮捕されるといった事件も起きている。
- Congress stamps out animal-snuff videos- September 6, 1999
- X51.ORG : 猫を踏み殺す黒いドレスの女 ? 中国全土で騒ぎに
- Girl's rape 'filmed by teenagers on mobile' - Times

※11.- ABC News: 'Happy Slapping' Spreads in London
- Youths Jailed Over Killing For Fun



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