【BBC】この度、インドで、あるいは世界で唯一「逆進のライセンス」を持つインドの逆進専門タクシードライバーが、核問題を巡って緊張状態が続くパキスタンへ二国間の平和促進を喧伝するため、逆進で向かうとのこと。インドはパンジャブ州在住のハープリート・デヴィ氏はこれまで二年間に渡り、あらゆる道と言う道を逆進で走ってきた。そして彼は念願のパキスタン旅行を果たすために家を抵当に入れて資金を作り、この度、ついにその夢かなってパキスタンまで逆進する事になったのである。この彼の持つ独特の信念「逆進の哲学」はある日、彼の車が故障した日に偶然生まれたという。デヴィ氏はBBC放送の取材に答え氏の信念をこのように語っている。「逆進してごらん。全てはうまくいくさ。」そしてデヴィ氏はこの信念に基づき、氏のかねてからの悲願であるパキスタンとの国交の平常化を計る為、逆進のままパキスタンへと向かう事になったのである。「独立以前の関係に"戻って"欲しいんだ。」逆進の哲学になぞらえてデヴィ氏は語った。
デヴィ氏がこの逆進の哲学を生み出したきっかけは凡そ2年前に遡る。その日、デヴィ氏はタクシーに乗せていた学生たちを降ろした後、突然タクシーが故障し、前進できない事に気がついたのである。そしてデヴィ氏は試行錯誤を重ねた後、最後は諦めてそのまま逆進で家まで帰ったという。
「そのとき、フと思ったんだ。”むしろ逆進の専門家になればいいじゃないか"ってね。」それから間もなく、デヴィ氏はまずアジア、そして世界の逆進記録更新に挑む事を決心し、それからというもの、デヴィ氏はところかまわず逆進を続けたのである。
そして現在、デヴィ氏はその逆進の才能を認められ、パンジャブ地方知事により、特別に「逆進のライセンス」を与えられたのである。つまり、いくら警察が氏の逆進をとがめようとも、デヴィ氏はオフィシャルな形で逆進を続ける事を許可されたのだ。デヴィ氏によれば、現在の最高速度は時速85km,しかし、今後は時速100kmの壁に挑みたいという。
「後部映像を映すビデオモニタもなければ、カーナビも積んでいないよ。運転は常に首を後ろ向きにしてやってるんだ。ただ、車は若干俺用にカスタマイズしててね。まず、前進ギアがそのまま後進ギアになってる。このお陰で逆進してもスピードを出す事が出来るんだ。」デヴィ氏は語った。
しかし、そんなデヴィ氏にも悩みはある。それは毎日の逆進のせいで首を痛めているのである。
「首は慢性的に痛いよ。痛みのせいで過去には何度か吐いた事もあるくらいでね。それに、背骨も既にイカれ始めてる。いつも身体をひねって運転してるからね。」
しかし、そうした身体を犠牲にしてでもデヴィ氏は「逆進の哲学」を貫く事には価値がある、と語るのである。
「何かを成すには、何かを犠牲にしなければいけないだろう?俺が逆進を貫く限り、俺は常に痛みと共にあるべきなんだ。」デヴィ氏は語った。
これまでにデヴィ氏はその逆進を安全に行うために車の後部にヘッドライトを付けるなど、愛車に様々な独自の改造を施している。またこれまで2年間の逆進生活にも関わらず、デヴィ氏は一度も事故らしい事故を起こした事がないという。
「ああ、危険なのは承知さ。だけど、俺には自信がある。最初はインドの道を運転するのはやっぱり怖かったよ。十分に舗装されていないからね。でも普段は十分に注意を払ってるし、スピードもそんなに出さないからね。たった一度だけ、軽い事故には合った事があるよ。そのときは道路がひどく渋滞しててね。でも、神の祝福があったお陰でだったよ。」デヴィ氏は語った。
またデヴィ氏は今後もしばらくはこの異端的な「逆進の哲学」を捨てるつもりはないと語っている。「俺の使命はインドとパキスタンの国交を少しでも改善することだからね。まだまだやるべき事があるんだ。それにこの挑戦に成功したら、平和と発展のメッセージを伝える為に、世界の国々を訪れたいね。」
デヴィ氏は語った。
【参考】バック走行にも法定速度があるの? | タクシーがバックしたら料金は? | 自動車ギネス珍記録「バック走行の最高速165キロ」