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40000錠のエクスタシーを摂取した男 英

xtacy.jpg【Guardian】この度、英ロンドン大学セントジョージ病院医学校の行った発表によれば、9年間で4万錠ものMDMA(エクスタシー)を摂取した男性の存在が明らかにされたとのこと。医師団の発表によれば、同校で中毒カウンセリングを受けたその男性(仮名A氏)は、過去9年間に渡って、最大で1日25錠、推定約4万錠ものエクスタシーを摂取していたことが明らかにされており、それはこれまで知られる一人の人間による摂取量記録(二千錠)を遙かに凌ぐものになるという。発表によれば、A氏は現在37歳、既に七年前に摂取を止めているが、今でも重度の記憶障害、偏執的妄想、鬱、幻視症状といった精神的副作用、また首や顎周りに痛みを伴う筋肉の硬直(男性は口を上手く開くことが出来ない)といった肉体的副作用に苛まれているという。そして医師らはこれら副作用は、今後永続的に続くものであると予想している。

A氏がエクスタシーの摂取を開始したのは21歳の時である。最初の2年間は週末に5錠程摂取する生活が続いたが、摂取量は増え続け、やがて毎日3・5錠程度を摂取するようになった。そしてその後も、日を追うごとに摂取量は増加し、ピーク時には一日に25錠を摂取するにまで至り、その状態が4年間も続いたという。しかしその後、A氏はパーティーの最中に倒れることが増えたため、ついにエクスタシーを止める決心をした。現在では、彼はもはや寝たきり状態であるにも関わらず、いまだ体内にエクスタシーが存在しているように感じると、医師らに語ったという。

幻視症状

しかしその後も彼の症状はその後悪化の一途を辿り、トンネル視(視野狭窄症)や幻視症状、妄想や筋肉硬直が度々再発した。「彼はもはや身体を動かすことが出来なくなり、助けを求めて病院に来たんです。もはや普通の生活を送ることが出来ない身体でした。」同校の精神科医クリストス・クイムチディス医師はそう語っている。クリストス氏は5ヶ月間、A氏の治療を行ったという。

医師の診断によれば、A氏はしばし重度のアルコール中毒患者に見られる短期記憶障害を抱えていることが明らかにされたが、A氏は既に集中力や注意力がまるで失っていたために、それ以上のテストを行うことさえ出来なかったという。

「これは例外的なケースです。彼の長期記憶は正常ですが、例えば時間や日付、スーパーでカゴに入れたものといった日々の事を彼は全く記憶することが出来ないわけです。更に懸念されるのは、彼は自分ではそれら記憶障害があることに気づいていないということです。」

また医師によれば、A氏の家族には他に精神障害を抱えた者がいないことが確認されたため、現在A氏が抱える症状が過剰なエクスタシーの摂取によるものであると結論したという。

「これは完全に常軌を逸したケースですので、研究を進める上では、いかなる可能性も無視するべきではありません。しかしこれがエクスタシーの重度中毒者に一般的に起こりうることであるとすれば、長期的にエクスタシーを摂取することは、治療し難い記憶障害や認識障害を引き起こすことを示していると考えられます。」

エクスタシーを巡る議論

エクスタシーがこれら問題を引き起こしているという可能性は、過去十年以上に渡って議論されてきた。それはエクスタシーにより、脳の中で気分や記憶に作用すると言われる、セロトニンのバランスが崩されると考えられたためである。しかし現在なお、これら影響が一時的なものであるのか、あるいは永続的な結果を残すのか、答えは出ていない。例えば最近、米ルイジアナ大学研究者らが行った研究によれば、鬱症状とエクスタシーの使用に明確な相関性は発見されず、従ってエクスタシーが引き起こす副作用は一過性のものであると結論されたという。

また今回、医師はA氏の脳をスキャンしたが、はっきりとした損傷や萎縮を認めることは出来なかった。しかし医師はこれらのスキャン結果はまだ十分ではなく、現在では解釈が難しい、と説明している。事実、現行法では人間の被験者を対象に、MDMAを投薬し、脳スキャンを行うことは法的に、また倫理的に禁止されているため、MDMAが人体に及ぼす影響を脳スキャンによって調査する方法は、限界がある。しかしまた、代わりに被験者として、治療中のドラッグ使用者を採用した場合でも、その研究は失敗に終わることが多い。何故ならば、彼等ドラッグ使用者のほとんどが、エクスタシーのみを摂取していたわけではないからである。

大麻

A氏の場合においては、やはり同時に多量の大麻を使用していたが、使用量を減らしはじめて以来、彼の妄想や幻視、不安は徐々に和らいでいったという。しかし記憶障害や注意力の低下といった問題はその後も残ったため、医師らはそれらが永続的な障害であると推測している。

また医師らがA氏を脳治療の専門ユニットへと送り、そこで治療を行ったところ、一時的に回復の兆しが見られたという。しかしそれから間もなく、A氏は自らその治療を止めてしまったのである。「残念なことに、彼は我々が評価を行う前に、自分からそれらの治療を止めてしまったんです。その後も我々は彼をサポートし続けましたが、ある頃から再び大麻を使用するようになり、治療を中止し、1年前に連絡が途絶えてしまったんです。」

その後、医師に取材を行ったガーディアン誌もA氏の行方を追ったが、結局A氏の足どりは掴めなかったという。


エクスタシーの副作用

MDMAは、歴史上最も盛んに研究が行われているレクリエーション・ドラッグ(所謂パーティー・ドラッグ)である。しかしそれら熱心な研究にもかかわらず、明確な副作用が存在するかどうかは未だ明らかではない。

過量摂取(オーバードーズ)による死

大量のエクスタシー摂取によって体温が上昇することは疑いのない事実であり、稀なケースとして、そののまま熱中症で死亡するケースがある。それらの場合には、摂取したエクスタシーの数、強度、環境、アルコール摂取の有無、体重といった様々な条件が関与するが、女性の場合は特に危険性が高いと言われる。エクスタシーに関連した死亡者の多くが、若い女性である。

低ナトリウム血症

過量摂取したことに恐怖し、パニックを起こした使用者が、水を飲みすぎて低ナトリウム血症を起こすケースもある。例えばレア・ベッツ(※)は90分間に約7リットルの水を飲んで死亡している。またこのような状況の場合、推奨される水分量は1時間に0.6リットルであると言われている。

※エクスタシーの過剰摂取によって死亡し、英国で話題となった当時17歳の少女。

中毒反応

中毒反応はしばし過量摂取や、低ナトリウム血症と混同されがちである。エクスタシーにアレルギー反応を持つ人々がいるかどうか、現在では定かではない。しかしまた、欧米の使用者のうち10%程度の人が、CYP2D6と呼ばれる酵素
(それらはMDMAを代謝する)を持っていない。従って、それら人々の場合においては、より偶発的なな過量摂取を引き起こす可能性は高い。

鬱症状

週末にエクスタシーを利用する多くの人々が、それ以外の日々において、気分が沈下することを報告している。これはMDMAのセロトニンへの影響を示唆するものではあるが、いまだ科学的証拠は発見されていない。またヘビーユーザーの多くが、気分の沈下から、鬱症状へと進行することを報告している。しかし研究によれば、2,3ヶ月の摂生によって、これら症状は回復すると言われている。

ポジティブ作用

先のルイジアナ大学で行われた研究によれば、使用者はエクスタシーによって”永続性の高い自己認識と自信、開放性、自身の内的問題に対する洞察”などが得られることを主張しているという。米国においては、MDMAを用い、PTSDを治療する方法なども盛んに研究されている。


【参考】エクスタシー (薬物) - Wikipedia
- MDMA(通称:エクスタシー)について・・・横浜市衛生研究所
- ドラッグ『エクスタシー』は5年以内に合法化される?(上)
- 米麻薬取締局、『エクスタシー』をPTSD治療に使う臨床試験を許可
- 米国を蝕む覚醒剤MDMA(通称:エクスタシー)の恐怖--健康情報
- MDMA大全―違法ドラッグ・エクスタシーの全知識
- Erowid MDMA Vault : Ecstasy Tablet Examples [A-B]

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