【Reuters】Andrea Fernandezさんが最後に覚えているのは彼女が赤ん坊を抱いて、ボゴタ市営バスに乗っているところである。警察が彼女を発見した時、彼女はトップレスの姿で高速道路に立ち、何者かにひどく殴打された顔で独り言をつぶやいていたという。コロンビアの病院によれば、彼女もまたスコポラミンの生み出した多くの犠牲者のひとりであるという。スポコラミン、それは人を簡単にゾンビに変える栽培が容易な、泥棒、レイプ犯罪者に愛される麻薬である。「病院で目が覚めた時、私はすぐに赤ちゃんはどこ?って聞いたわ。でも誰も何も言わず、ただ私を見つめたの、、。」被害にあったFernandezさんは涙ながらに話した。警察によれば彼女の息子Diego君はおそらく幼児売買に関わるギャングに誘拐されたのだという。無色、無臭、無味と三拍子揃ったこのスコポラミンは人を簡単に従順にさせてしまう。被害者は例えば、家財強盗、銀行預金の引き出し、また女性の場合は繰り返し飲まされてギャングのレイプ人形にされたり、娼婦をさせられているケースもあるという。そしてこの種の犯罪においてとにかくやっかいなのは、例えば米国内での薬物を利用したレイプ犯罪は被害者に記憶が残るのに対し、スコポラミンの場合、被害者に一切の記憶が残らないことである、とドラッグの専門家は語る。
コロンビアにおけるスコポラミンの長く暗い歴史はスペインの征服にまで遡る。言い伝えによれば、コロンビアのインディアンは酋長が死んだ際、その奴隷や妻を静かに葬るためにその薬を利用したという。またナチスの「死の天使」と呼ばれたJosephMengeleは自白剤としてスコポラミンを用い、他にも20世紀初頭、その鎮静効果と記憶喪失の効果を期待して赤ちゃんの出産時にも利用されたという。
そして今日、スコポラミンをコロンビアで見つけるのは非常に簡単なことである。
スコポラミンの素になる"borrachero"とも"get-you-drunk(あなたを酔わせる)"とも呼ばれるその木は市の至るところにあり、子供を持つ母親は”黄色と白の花の下で眠らないように”と子供たちに教える。また花粉を吸っただけでもおかしな夢を見る事があるという。
「フェンスを高くしないといけないかな、、。あれを少しでも食べてごらんよ。あんたはきっと死ぬだろうね。」ボゴタ市植物園の生物学者GustavoMorales氏はboraccheroの種で遊ぶ子供たちに目をやりながら冗談めかして話す。
警察によれば、多少なり腕に覚えのある犯罪者なら、種から簡単にスコポラミンを生成してしまうという。
また安価で純粋なスコポラミンは隣のエクアドルからも輸入されるという。事実、例えばアルカロイドは乗り物酔いやパーキンソン病治療など多方面に渡って世界中で医療目的にも利用されている。
少なくとも今現在は、スコポラミンを利用した犯罪はコロンビア内だけに留まっているようである。また何故コロンビアでのみこうした犯罪が顕著なのかも定かではない。ある分析によれば、それはアンデス山脈に位置するコロンビアという土地がたどってきた文化的背景 - 幼児誘拐、コカイン密売の世界的な温床であり、また言うまでもなく、南米の長いゲリラ戦争 - に原因があるという。
またスコポラミンを使った犯罪は多すぎるために、よほど珍奇なものでない限りは通常ニュースにも出てくることは少ない。例えば以前にはボゴタの若い女性3人が胸にスコポラミンを塗ってある男性を誘惑し、食い物にしたという事件があった。誘惑されてうっかり胸を舐め、あっさり魂を失ったその男は簡単に銀行口座の暗証番号をしゃべり、男は数日間監禁され、その間、彼女達に口座の金を使い込まれたのである。
ボゴタの米大使館はこのスコポラミン犯罪を非常に真摯に受け止め、被害の蔓延を防ぐために様々な案を出した。
中でも最も分かり易いのは「ボゴタのバー、またナイトクラブで視界の外にある酒は絶対に飲まないこと」。
しかしそれでもこの2年間で3人の米政府で働く者が同薬物による盗難被害にあっているという。またそれ以外にも時折、スコポラミンの酔いを引きずったアメリカ人被害者が助けを求めて大使館に駆け込んでくるという。また、大使館関係者は語った。
「印象的だったのは、ある薬物を投与されたアメリカ人が、ホテルのドアマンに向かって”何で私の荷物を外に持っていくんだ?”と尋ねた。するとドアマンは”だってあなたがそうしろと仰ったじゃないですか”と答えたんだとさ。」
【参考】「 毒薬の手帖」の植物毒について | チョウセンアサガオ中毒について(ダチュラ)
【HOT】脳の働きと超能力
ダチュラはよく聞くけど、スコポラミンてのは初めて聞きました。
「人間をゾンビに変える」とは、よく言ったものです。
>子供を持つ母親は”黄色と白の花の下で眠らないように”と子供たちに教える。
とは、切実なんだけど、なかなかロマンティックな訓示だなあ。