【KARE11】今年3歳のギャビー・ジングラスちゃんの疾病は、非常に稀な、そして奇妙なものである。これまで医師や両親は必死になって情報を探し続けてきたが、現在でも治療方法の糸口すらつかめていない。「この前も階段を歩いている時に転んで、階段から落ちたんだ。でも、いつもの通りだよ。ギャビーは普通に立ち上がって、何もなかったような顔ですぐに階段をのぼり始めた。涙ひとつ見せずにね。」父親のスティーブは語る。ギャビーちゃんは転ぼうとも、滑ろうとも、あるいはいくら激しく地面に打ちつけられようとも、絶対に泣く事などないのだ。即ちギャビーの疾病は、「痛みを一切感じない」という非常に奇妙なものなのである。ギャビーが患うこの疾病は現在のところHSAN type 5(第5種遺伝性感覚自律神経性ニューロパチー)と呼ばれ、先天的な遺伝子の障害をその原因としている謎の多い疾病である。また患者数は全世界でも凡そ12人、医師の知る限りこの疾病を患っている米国内の患者はギャビーただ一人という非常に稀な疾病なのである。
「全米でただ1人、全世界でも、たったの12人だけです。ですから、まだもちろん支援団体もありませんし、インターネットを調べたところで大した情報もありません。こうした疾病に苦しむ子を持った親にも会った事がありませんし、一体どうしたらいいのか本当に分からないんです。」ギャビーの母親トリシュは語った。
ギャビーが生まれたのは3年前である。「なんてかわいい子が生まれたのかしら。」母親のトリシュさんは当時を回想する。しかし、成長するにつれ、尋常でない力加減で自分の顔を激しくかきむしるなど、ギャビーの奇妙な行動が目立つようになっていったのである。そしてギャビーに歯が生えた時、それは明らかな異常行動となって両親を驚かせた。「ギャビーは自分の手を、普通ではあり得ないくらいの強さで、とにかく何度も何度も噛んだんです。生肉が見えるくらいね。」トリシュは語る。
その後、心配した両親はギャビーを病院に連れて行った。そして、そこで初めてギャビーのそうした異常行動が、神経性の障害によるものだという事が明らかになったのである。
「人間の中には痛みを記録し、その信号を脳へと送信する非常に細かい神経繊維があります。通常、それで人は、例えば何かにぶつかった時、"痛い"と認識する事が出来るわけですね。しかし、ギャビーはその神経繊維が全く機能していないわけです。」ジレット特別小児病院のスティーブン・スミス医師は語る。
普段、我々は痛みをネガティブなものとして捉えるのが常である。しかし、痛みが無いという事は即ち、危険に気がつかないという大変危険な事であるという事をギャビーのケースは教えるのである。
例えば、ギャビーには既に歯が一本もない。「もう、どこも噛まないように、全ての歯を抜いてしまったんです。」父親は語る。またギャビーはかつて、おもちゃを強く噛みすぎて歯を折ったり、唇や舌を強く噛みすぎる余り、病院に運ばれた事すらあるのだ。
「"痛み"は我々の防衛システムなんです。そして、ギャビーにそれがないのです。」スミス医師は語る。
つまり、痛みは我々を傷つけているのではなく、我々を守るものなのである。
また当然、ギャビーは目を守ろうとすることもしない。ギャビーはかつて自分の目を強くこすりすぎた為に、医師は止むなくギャビーの瞼の上下を縫い付け、目を開けられないようにしたのだ。しかし、医師がそうした決断を下した時には既にギャビーの目は激しく損傷を受け、手遅れになっていた。
そして先週、両親は、ギャビーが自分で傷つけてしまった左目(既に緑内障にかかり、膨張してしまっているという)を取り除くか否かを巡る相談を行うため、フェアビュー大学医療センターへと向かった。
「この子の目がまだ正常だった頃の写真を見るたびに、後悔して止みません。私たちがギャビーの症状に気づいて、ゴーグルをつける事にしたのはそれから後の事です。」と母親が語る通り、現在ギャビーは残された右目を守るため、24時間ゴーグルをつけて生活している。それはギャビーが大好きなお人形達とギャビーが遊べるようにと父親が考えついた苦肉の策だったのだ。
「ギャビーはゴーグルを付けることを本当にうっとうしがります。でも、もうそれはギャビーの一部なんです、、。」母親は語る。現在、ギャビーはどこへ行くにも必ずそのゴーグルをつけて生活している。また更に、幼稚園に行く時は必ずギャビーの行動を見守る助手を同伴させたりと、厳重な注意の下で暮らさざるを得ない状況が続くのである。
しかしそれでも、ギャビーはこれまでにいくつもの怪我を負っているのである。昨年は何らかの原因で下顎を骨折したこともあった。しかしその骨折もギャビーが何ら意思表示が無いために、一ヶ月に渡って放置されていたのだ。また秋には、ギャビーは突然ベッドから這い出し、高熱の蒸気加湿器の前に立ち尽くしていたこともあった。そしてその時は第二度熱傷(局所的に水疱を生ずる紅斑性火傷)を負った。そして、そのような大やけどにもギャビーは全く苦痛を感じなかったのだ。
しかし、ギャビーにはそうした障害をものともしない素晴らしい才能がある。それはユーモアである。彼女のそのユーモアと立派な態度は彼女に会う者全てを魅了すると母親は話す。
「ギャビーの性格が、彼女自身の助けになってる事は間違いないわ。」
現在、まだ非常に情報の少ないこの稀な疾病に苦しむギャビーを救う事は困難な事かもしれない。しかし、両親は決して諦めてはいないのである。「痛みを感じなくとも、幸せだけは感じて欲しい」母親は語った。
【参考】人が痛みを感じない瞬間 | 痛みの科学 | 麻酔の役割 | 痛みとは
通称無痛症でしたか、確かにかなり稀な例のようですが、
若干の邪推をすると幼いうちに事故死するケースもあるのではないでしょうか。
もう5,6年ぐらい前になりますか、テレビで取り上げられたことがあったと思います。
最近だと乙一氏の「ZOO」という本にこの病気からヒントを得たのではないかと思われる短編小説があります。
私も見ました。その子は痛みを感じないから自分がスーパーマンだと信じて家の2階のベランダから飛び降りたりとかしてもう足だけでも10回は骨折しちゃっててうまく歩けない子でした。
>>Maxtor
>いわゆる無痛症
は第4種です。いわゆる無痛無汗症というのは割と患者も多く、
日本にもいますね。この子の場合は実際ソースにもある通り、
第5種ですから、更に別の病気ということになるでしょう。
もう少し大きくなって,自分が傷ついたら親や周りのみんなが悲しむっていうことに気付くようになると,『まるみえ』でも紹介されてた子達のように怪我に自分で気を付けるようになるだろうね。
今、腹が痛いんだけどこういう痛みもないのですね・・
感覚はあるんだろうか?物に触れてる実感は聴覚からしか認識できないんだろうか
垣原サンは、「痛みは感じるけどもそれを性に置き換えて快感としか感じれない」
という、ある種病気ですねこれも。でもギャビーとはまったく異質だね。
痛みを「いやだ」とか「快感」というSやMの感情も得られないのは
逆に言わせてもらえば滑稽としか言いようがないような気がする。
既に最初のコメントで言及されているけど、この病気の人間は簡単に死んでしまうでしょうね。症例が少ないというのは発生数が少ないだけじゃなくて発見される前に死ぬことが多いからかも。
夢枕獏の「サイコダイバー」シリーズにいましたね。
超絶美形の美空さん。
リアルでいるヒトなのだとは思いもしなかったですが…
既出コメントだったらご容赦を。
タイムリーに3月6日付で読売新聞サイトに「無痛無汗症」についての記事が出ています。
日本の症例、患者の会などの情報あり。
[ >> LINK ]
今、この症例について調べています。
とてもありがたい情報です。
ギャビーのことは既に知っていたのですが、ここまで詳しい情報はありませんでした。
感謝です。
>>29
それがさぁ、実際痛みを知らないと心の痛みもわからないんじゃないか?なんでもそうだけどさ、体験しないと実のところはわからない。話だけ聞いたり読んだりしただけでは。バーチャルじゃなくてエクスペリエンス。
この子は自ら望んでそうなったわけじゃないだろうが、悪いが、痛みはわからないから、他人を傷つけることも多分あるな。
>>31
十数年前読んだ、岩波新書か何かの痛みに関する本に、
痛みや熱い・冷たいというような感覚が、持続する時間につれ
倍化して感じられるといった症例が書かれていたのですが…
(ぬるい湯に手をつけていて、時間が経過すると熱湯に感じられる)
これのことかもしれません。
家族のものです。周りの対応や小さい頃からの接し方によっては感覚的に理解できなくても、こういう状態になったら危険であることを伝えれば判断ができます。皆さんはやはり身近にそういった人がいないからいろいろなことが想像できるのだと思います。無痛無汗症は、痛さを感じないことも大変だけれど、汗をかけないので体温調節もできません。これも、やはり大変なことです。ケアをするほうも、体の変化には常に敏感にもなります。ただ、良く考えてほしいのは、自分に知識が無いのに想像で物事をこういった公の場所に出してほしくないということです。自分が痛みを感じないから他の人にもするのでしょうか。この文章を読んできっと悲しむ人が出てくると思います。どうか誤解を与えるような表現だけはしないで下さい。本人に話を聞いてみると、身体を冷やしているときや入浴時などに気持ちがいいといっているので、たぶん痛みに対しての感覚鈍いのだと思います。まぁ、うちの場合は比較的軽度なのでそういってるのかもしれませんが。心の痛みに関してですが、誰だって悲しい感情は持ち合わせています。たとえ重度の知的障害を持っていたとしてもそれは絶対にかわりません。ここに書いている人たちがどのように考えて書き込みしているのかはわかりませんが、もうすこしじっくり勉強してみてください。
>44
改行ないからろくに読めてないけど、どこの家族?
そういう症状持った日本の人の家族ってこと?
似たような書き方でやっぱり改行の無い長い文章書いてる人が他の関連記事のレスであったけど
どっちも多分言ってる事はいい事な気がするって事は感じる けど読むのがしんどい
知り合いの話ですが。。。
交通事故後身体の半分の痛覚がなくなったそうです。
痛覚がないので、力加減もわからなくて
ガラスのコップを握りつぶしてしまったり、
何をどの程度の力でつかめばいいかわからなくて
苦労したと言っていました。
どうしても「何をしても痛くないからどう扱ってもいい」
と考えてしまうらしく、熱いものを平気でつかんでしまうし
そちら側をかばうこともしません。
そばで見ていてハラハラしてしまいます。
病院での治療は可能でしょうか?
ご存知の方がいらっしゃいましたら、教えてください。
ちなみに、その人は半分痛みを感じませんが、
とっても優しくて頼りになるいい人ですよ♪