【NewScientist】カナダの生物学研究チームの発表によれば、ニシンが肛門から空気を出すとき、すなわち屁をする時に非常に高いピッチの高周波音を発している事が明らかになったとのこと。(参考:ニシンの屁/wavファイル)今回研究を行ったカナダはバンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学生物学博士BenWilson氏は取材に答えて「言うなれば、ハイピッチのさえずりのようなものだね。」と語った。またWilson氏は何故魚がこのようなハイピッチな屁を作り出すのかその原因はまだ明らかではないとしている。しかし、博士によれば、今回の研究によって、魚達がどのようにして日没後でも群れを作ることができるのかといった魚のコミュニケーションに関する様々な謎を解明するきっかけになるかもしれないという。
「まさに面白びっくりだね。今回の研究は魚類(これまで知られるイルカ、クジラは哺乳類)がコミュニケーションを取る上で高周波音を用いるという最初のケースになるかもしれない。」今回の発表を受けて水中音響学専門家DennisHiggs氏は語った。また水生音響学専門家のArthurPopper氏も「考えたこともなかったよ。しかし、魚は我々が想像する以上に訳の分からない事をたくさんするからね。」と語った。
これまでにも魚が仲間を呼ぶ際、腹部の浮嚢(ふのう)と呼ばれる部位を使って空気泡を生産し、ブーブーというような低音を鳴らすことは知られていた。浮嚢とは魚がガスを吸収、分泌する事で浮力を調整する部位である。
そして科学者達は今回、まず、この浮嚢が単に浮力調整だけでなく、そこから高周波を発しているのではないかと仮定、しかし、研究を進めるうちに、実は高周波音が鳴るタイミングが魚が屁をする(肛門から泡を出す)タイミングとぴったり一致している事に気がついたのである。そして、その後更に精密な研究の結果、浮嚢から肛門へと空気が流れるタイミングで高周波音を発している事を発見したという。
研究者らはこの高周波音を高速反復性律動音(FRT)と命名。またWilson氏は人間の屁との相違点として、今回発見されたFRTは決して消化活動によって行われるものではない事を指摘している(魚にエサを与えた場合も音が変化しなかったという)。また研究者らは魚にサメの匂いを与えて恐怖を引き金として屁をさせた場合にも音が変化しなかった事を検証したのである。
そして以下3つの研究結果から、ひとまずの結論として、FRTはおそらくコミュニケーションの為に発せられているということが明らかになったという。第一に、たくさんのニシンが水槽の中に入れた場合、FRTの生産量が増大するということ。第二に、ニシン達がFRTを発するのは照明を消して暗くした場合のみであること。そして第三に、他の魚がFRTを聞き取れない一方、ニシンはFRTを聴取可能であるということ。これらの事実は、ニシンが他の魚に聞き取れないFRTを用いてコミュニケーションを取り、外敵から身を守っているということを示しているのである。
またWilson博士は今回のアイデアはあくまでもまだ試論である事を強調している。しかし、今回の発見が何らか意味を持っている事は間違いない、と語る。またもしこの事実が明らかになった場合、イルカやクジラと同じく、ニシンはその独特のFRTを追跡され、容易く捕獲されることになるのかもしれない。またある専門家によれば、人間の発する音が海中の哺乳類にダメージを与えるという主張もある。もしもこの研究が進み、事実が明らかになれば、魚類が身を守るためにの発するその音は、逆に、彼らの滅亡のきっかけとなってしまうのだろうか。
【参考】日本サウンド財団 | 音と耳の話 | お魚には耳はあるのか!
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