【BBC】この程、フランスにて、世界初となる顔面移植手術が行われたとのこと。今だ各国で議論が続くこの顔面移植手術において、レシピエント第一号となったのは、犬に襲われて唇、顎などを失った女性、そしてドナーとなったのは脳死した女性であるという(追記1、2参照)。手術では、ドナーの顔面から皮膚組織、筋肉、動脈、静脈が切り取られ、それがレシピエントの顔面下半分として結合された(写真)。医師によれば、女性の顔はドナーとも、以前とも異なる、言わば”ハイブリッド顔”になると話している。顔面移植手術自体は、ここ数年、米国や英国、フランスで研究が進み、技術的にはもはやいつでも可能な段階にあった。
【追記1】その後、女性の名前はイザベル・ディノワールさんと判明した模様。また手術時間は5時間ではなく、15時間に及んだことなどが医師によって明らかにされている。
【追記2】その後の発表によれば、ドナーは移植直前に首吊り自殺した女性のものであったこと、またレシピエントの女性はドラッグのオーヴァードーズで昏睡状態に陥り、その間に飼い犬に顔をかじられたこと等が明らかにされた模様。
- Sunday Times: My strange life with someone else's face [ 29jan06 ]
また皮膚については、患者自身の顔面以外の部位から採取した皮膚(それらはテクスチャーや色が顔と異なる)を用いるよりも、他者の顔面皮膚を用いる方が、より良い結果が得られる事が明らかにされている。しかし、倫理的問題性、顔が変わるという事に対する患者の精神的ショック、免疫抑制剤といった問題が指摘され、これまでその実施は見送られてきたのである。
手術を受けた38歳の女性は、手術前、まず幾度にも及ぶカウンセリングを受けた。そして先週末、約5時間に渡る手術を終えた。ニュースを報じたフランスのメディアによれば、既に複数の臓器を提供している脳死状態のドナーから、顔面の皮膚組織、筋肉、動脈と静脈が切除され、女性に移植されたという。
また手術は、ベルナルド・デヴォシュル教授とジャン・ミシェル・ドゥヴェルナルド教授らのチームによって行われた。病院の発表によれば、女性は今年5月、犬に襲われ、絶望的なまでに顔を損傷し、その後喋ることも、食べることも出来なくなってしまったという。そして術後、女性の体調は全く順調であり、移植による継ぎ目も特に見られないとしている。
しかし他の移植患者同様、今後、女性は移植組織に対する拒絶反応を抑制するため、免疫抑制剤を摂取しなければならない。またロンドン病院のイアン・ハッチソン口腔整形外科医は、移植された血管内で血が凝固したり、免疫抑制剤によって患者が発癌する可能性も高くなるという危険性も指摘している。そしてまた、今回の手術が他者の皮膚を使った史上初の顔面移植手術となることを認めた上で、倫理的問題点を指摘し、次のように語っている。
「まずドナーを誰にするのか、それが一つの考慮されるべき問題点です。移植される顔面組織はまだ心臓が脈動しているドナーのものでなければなりません。従って、例えていえば、貴方は自分の妹から、酸素吸入器を外す前に、顔面を取り除くことに同意しなければならないわけです。」
英国移植手術協会倫理部門長のステファン・ウィグモアは次のように語っている。「手術から長期間がたって、顔面に現れる影響が如何なるものとなるか、それはまだ未知数です。皮膚は免疫系によって激しく拒絶されるため、長期にわたって強い免疫抑制剤を摂取しなければならないでしょう。またもし今回の移植が失敗した場合、患者の状態が更に悪化するかどうかもまだ明らかではありません。」
また英国で顔面移植手術研究を行う外科医マイケル・アーリー氏は次のように語っている。「もしうまくいけば、これは顔面移植手術の大きな第一歩となるでしょう。また今回は鼻と唇を結合する、言わば部分的な顔面移植になるため、ドナーとレシピエントの顔が似てしまうという懸念も、今回はさほど問題にはならないのではないでしょうか。我々は患者とチームの成功を祈っています。そしてその手法をより詳しく研究し、今後の顔面治療に役立てることが出来ればと思っています。」(写真は死者から引きはがされた顔面皮膚。今回のものではない。)
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