【Reuters】英国への入国を拒否されたケニア人男性が、ケニアの国際空港にて6ヶ月間に渡って生活しているとのこと。サンジャイ・シャーさんは今年5月東アフリカの国に滞在中、英国に10年間滞在可能となるBOC(英国海外市民)を取得。一旦ケニアに帰国した後、BOCを手に英国渡航を計画した。しかしケニアでは二重国籍が認められていないため、シャーさんはせっかく取得したBOCではなく、ケニアのパスポートにて渡航することに。そして今年5月28日、シャーさんは英国はヒースロー空港にひとまず到着するが、今度は英国の入国管理局が"帰国チケット、そして十分な滞在費用を持っていなかった"という理由から彼の入国を拒否。シャーさんはそのままナイロビの空港へと強制送還されてしまったのである。そしてシャーさんはケニアへの入国は許可されているにも関わらず、空港に滞在することを選んだ。
現在、シャーさんは英国から国外追放されているため、おそらく再び英国に向かうことは困難である。しかし、シャーさんはやっとの思いで取得した英国海外市民権を失うことを恐れ、ケニア人としてケニアに入国することなく、空港に留まり続けているのである。「パスポート(BOC)まで渡しておいて、どうして入国を拒否するのかが分かりませんね。それに、一旦入国拒否された以上、おそらくもう英国に行くことは難しいかもしれません。」シャーさんは語る。
現在では週一回のペースで彼の妻が食料を携えて空港を訪れている。しかし、当然それだけは足りない為、時折、空港内のバーなどに頼んで食料を提供してもらっているという。そして夜はラウンジの椅子や、薄いマットレスを敷いて眠り、明け方、その日初めての到着便アナウンスで目を覚ます生活を送っているのである。今ではすっかり痩せこけてしまったシャーさんは"少なくとも今後6ヶ月間は"空港内に留まり続けることを覚悟しているという。そしてまた英国の入国管理局から押された"国外追放"の印が今後、様々な国への入国に支障をきたすことを心配している。
ケニアの当局はシャーさんに対して、ケニアに入国し、再び英国にBOCを申し込むよう進めている。また一方、ケニアの英国領事館はシャーさんに対し、ケニア入国後もまだBOCは有効であること、そして国外追放の処置について英国に抗議する権利があることを伝えているという。「彼がヒースローについた時、彼は(英国からの)出国チケットを持っていませんでした。しかし、観光旅行者であると話したんですね。それで入国管理局の係は彼の入国を拒否したわけです。」領事館の担当者はそう語っている。
近年、英国をはじめ、ヨーロッパ、アメリカなどでは過剰な入国管理が行われており、今回のシャーさんのケースもそうした影響下で起きたものであるといえる。また現在公開されている、S・スピルバーグの監督の「ターミナル」という映画はトム・ハンクス演じる主人公がニューヨークの空港に数ヶ月間滞在するという作品である。この映画には実際にモデルとなった男性が存在し、彼の場合はシャルル・ドゴール空港に16年間に渡って滞在し続けている。
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