【NewScientist&BBC】かつて、マンチェスター大学のAndreGeim教授と生徒のチームが開発したヤモリテープは非常に小さなものだった。骨子となる繊維を作るのが非常に困難だったからである。しかし今回、同研究団らはその研究を再生し、大量生産も可能な新素材の開発にようやく成功したという。新開発のテープは0.5cm四方のもので100g以上のものを貼り付けることができ、試験者がテープを手に巻きつけたところ、まるでスパイダーマンのように片手で天井にぶら下がる事が出来たという。かつてカリフォルニア大の研究チームがヤモリの手の秘密を暴いてから実に3年目の成果である。このテープが利用しているのは分子の間に働くファンデルワース力(オランダの科学者の名に由来)と呼ばれる力で、ヤモリの手にあるのと同じ、何百万もの極細な髪のようなものを用いる特殊な構造のものであるという。この力は分子間に蓄電することで、それぞれのが分子同士が強く引き合う作用を利用し、ヤモリのような動物が壁を登ることを可能にするのだという。そしてようやく、その力を利用した人工的な繊維の開発に成功したのである。実験では既にガラスの天板に片手で張り付くことにも成功しているが、まだ問題もある。このヤモリテープの開発プロセスはコンピュータチップの開発過程に似ている所があり、時間もかかる上、何よりも生産コストが高価である。他にも粘着力が長時間作用しないという点もある為、まだ商用化には時間がかかりそうだと教授は話す。また今後は研究の成果を公表し外部からの研究支援を要請するという。教授はこの研究の成果が様々な事に利用される可能性を秘めており、当初の研究の失敗に一度はめげたが、たくさんのボランティアのお陰でこの研究が成功した事への感謝を述べ、「スパイダーマンは所詮漫画、サイエンスフィクションだけど、”ゲッコーマン”は近い将来、御伽ばなしではなくなるかもね。」と語った。
【参考】ファンデルワース力の解説 | いつでもヤモリ