【St.PetersburgTimes】しかし、本当にこんな事が起こり得るのだろうか。19年間も海の底に沈み続け、浮上するような事がありえるのだろうか。フロリダ大学で海洋科学の教授を務めるRobertWeisberg氏はSt.Petersburg付近の潮の流れの簡単なモデルを作って今回のこの事件を分析する。「あり得ない事ではないよ。ボトルが沈められたClearwaterからドンがボトルを発見したTempa湾に流れるのは十分考えられることだ。丁度その向きで循環する潮の流れがあるから、ボトルがそのエリアの中に留まっていたのは何ら不思議な事ではない。」また氏の推測によれば、ボトルはおそらく湾底のどこかのマングローブの中に15年程度引っかかっていたのだという。そしてボトルは少しずつ移動しながら、浮き沈みを繰り返し、Sanibel島と湾内を循環するのだという。(詳しくはリンク先の地図画像を参照)
そして火曜、Lisaは娘をオハイオから呼び、兄弟、姉妹、そしてRogerの父親に電話した。
彼は電話口で激しく泣きじゃくった。「すっかりボトルの事は忘れていたよ、、。今は何を言ったらいいのか本当に分からない、、。とにかく色々な思い出が呼び覚まされて、、、。でも、Lisaに言ったよ。息子はきっと俺達に今でも一緒にいるってことを伝えようとしたんだってね、、、。」Rogerの父親Roger.K.Clay氏は話した。
またLisaは彼にも火曜の夜、ボトルを見つけた人に会う事を話した。そして火曜の晩、7:30を少し回った頃、Lisaと旦那Alが待つそのレストランにドンは現れた。ドンはボトルを大事そうに抱え、レストランのロビーでLisaに会うなり、涙を流し、そしてお互いに肩を抱き合った。
キャロルとアルはその場に立ち会い、そして互いに目を合わせた。
「これは現実なのよね?」
「ああ、彼は今も生きているんだよ。本当に素晴らしい子供だったんだな。」アルは答えた。
レストランの食事を囲みながら、彼らは長い間Rogerについて語り合った。彼が下らない冗談が好きだったこと、妹の部屋のドアに水が入ったバケツを仕込んでいたずらしたこと、釣りが大好きだったこと、彼が高校時代フットボールに打ち込んでいたこと、大学時代には野球の選手だったこと、彼の彼女が彼の事を強く愛していたこと、、
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小さい頃から、ロジャーはバイクを欲しがった。両親が離婚した後もいつも母親のLisaにおねだりしたが、彼らは危険だからと頑なにそれを拒んだ。しかし21歳の誕生日を迎えたとき、RogerはスズキのGSX-R750Wを買った。初めてそれを運転してるのを見たとき、Lisaは卒倒しそうになったが、Rogerは黙ってニヤっと微笑んだ。
しかしそのバイクは壊れていたのである。燃料供給の部分に不備があり、しばしばエンジンが停止した。Rogerは何度も販売店にバイクを持っていったという。丁度5年前のその日、やっと修理されたと思われたそのバイクに乗って販売店から帰る途中、事故は起きた。高速道路を走行中にまたエンジンが停止し、彼のバイクは操縦不能のままセンターラインを越えてしまった。
「あれは本当におかしな事だったわ。いい、あなた達は絶対に子供を死なせるような事はしてはいけないわ。」ひざの上でRogerのボトルを転がしながらLisaは語った。彼女は財布から高校の卒業式の時の写真を取り出してドン達に見せた。「ハンサムな息子だね、、。本当に残念だ、、。」ドンは話した。
「彼はFBIに入りたがってたわ、、。学校に行きながらアルバイトをしていたわ。誰もが彼を愛していた。彼のお葬式には400人以上の人が来てくれたのよ、、、。」
お葬式から数週間後、彼女の元に一通の手紙が届いた。それはRogerが乗っていたバイクがリコールされるというものだった。バイクはやはり燃料系統に欠陥があったのだという。Lisaは弁護士に相談し5年間に渡ってバイクを製造していたスズキと法廷で争い、今年2月ようやく調停したばかりなのだという。
「いくらお金をもらった所でRogerは帰ってこないわ。でもあなた達にはまだ全てがある。」
彼女はドン達に話した。「毎年、この時期になると怖くなるの。ほとんど最悪の気分よ。でも、今、何だか前向きになれそうな気がするわ。」彼女は立ち上がると、ドンとキャロルの手を固く握りしめた。
「本当にこんな幸せな気持ちにさせてくれてありがとう。Rogerのメッセージを届けてくれるなんてね。彼はまだ私にいたずらしてるのかしら。」そう言って彼女は微笑んだ。
そして夕食を終え、やがて二つの夫婦は再会を誓い、それぞれの帰路についた。
ボトルは今、Lisaの家の棚に飾られている。