『X51.ORG THE ODYSSEY』 PROLOGUE


X51.ORG THE ODYSSEY

私はX51.ORG(http://x51.org)というサイトを運営しながら、世界の奇妙なニュースや、奇妙な事件を日々収集することをライフワークとしている。さらに年に一度か二度、海外視察という形で現地に赴き、現在の、あるいは古くからある謎の実態に迫るべく活動行っている。そして本書は、2003年から2006年にかけ、私がUFOや雪男を求めて海外を歩き、この目と耳で見聞してきた、視察記録の集大成である。

2003年は北米、2004年は南米、2005年はアジア、そして2006年には再び北米を回った。本書に書かれた幾つかのレポートは現地から記したものであり、また幾つかのレポートは、旅を終えた後でまとめたものである。従って、書かれた時期によって文体が異なるように見えるかもしれないが、それはこの本の執筆期間が、実質4年に及んでいるためであると言える。その点はご容赦頂きたい。それではまず最初に、この本の中で描かれる、私が訪れた視察地について簡単に紹介しておこう。

X51.ORG THE ODYSSEY

2003年に訪れたエリア51は、アメリカの中西部、ネバダ州のラスベガスから北西160km程の地点に位置する、謎の広大な機密軍事施設である。1980年代、同施設で働いていたという元科学者の暴露により、そこでUFOの開発が極秘裏に進められ、異星人を匿っていることが明らかにされた。現在でも、全米きってのUFO目撃スポットであり、またUFO映画などにも必ず登場することから、その名は世界的に知られている。

2004年は、南米の奥地に、ナチス残党のUFOの秘密製造工場がある、という古くからの伝説を検証するため、実際にメキシコからペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンなどを跨ぐ形で、三ヶ月以上の長期視察を行った。最終的に辿り着いたその場所は、エスタンジアと呼ばれ、第二次世界大戦後ナチス残党が逃亡した場所であった。

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2005年は再び三ヶ月以上かけてネパール、チベット、ヒマラヤを中心に回り、同地域に古くから伝わる地下王国シャンバラ、そしてイエティ(雪男)の伝説を検証した。今日、イエティの正体は、しばし、ヒグマであると言われるが、それは本当なのだろうか。私は実際にチベットやヒマラヤの各村々を訪れ、そこでイエティ存在の証拠や、未だに囁かれる目撃談などから、イエティ=ヒグマ説の妥当性について、再検討したものである。

2006年は、再びアメリカへ飛び、ニューメキシコ州のロズウェルを訪れた。ロズウェルは1947年、「空飛ぶ円盤」が墜落した地として知られ、今日ではアメリカUFO問題の始まりの地として位置づけられている。私は実際にその円盤墜落地点や町を訪れ、空飛ぶ円盤の正体と事件の全貌について、検証、考察を行った(ロズウェルの視察は2006年に行ったものだが、今回、書籍に掲載するにあたっては年代別でなく地域別としたため、あえて第一部に掲載したことを留意して頂きたい)。

いかがだろうか。エリア51、ロズウェル、エスタンジア、雪男、シャンバラ。本書でテーマとしているこれらはいずれも古くから存在する逸話であり、この種の話題が好きな人々ならば、どれもきっと一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。70年代半ばから90年代にかけ、これらは幾度となくテレビや雑誌で取り上げられ、一世を風靡しておきながら、結局何が何だか分からないまま、世紀末と共に私たちの前を通りすぎていった。そして今では、UFOも宇宙人も雪男も、あたかもサブカルチャーの一部としておざなりに定着し、「結局分からないけれど、ないといっておけば間違いはない」というのが、良識ある大人たちの暗黙の了解となっているようだ。しかし例え世間では忘れ去られ、地味にミレニアムを迎えようとも、私はこれらの真相が気になって仕方がなかった。

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やがて90年代半ば頃からインターネットの時代が始まり、検索エンジンなる便利なものが発明されると、私は血眼で海外の情報を調べはじめた。そして丁度黎明期にあったブログ・ツールを利用し、世界の超常現象やオカルト情報を収集する目的で、X51.ORGというサイトの運営を開始したのである。しかし結局、いくらネットで情報を集めてみたところで、これら世界の謎の真相に近づきようもなかった。そこには更なるカオスが生まれ、本当らしい情報も嘘臭い情報も、肯定意見も、否定意見も溢れかえっていた。事が始るのもモニターの中ならば、終わるのもモニターの中だ。検索エンジンや海外のニュースサイトを見つめながら、何かを知ったような気持ちになる自分に対する、いらだちだけが募っていったのである。それらを信じることも、否定することも容易いが、それは結局、私が子供の頃にしてきたように、テレビや雑誌の情報に身を任せるのと、何も変わらなかった。

だから私はマウスを置いて、リュックを背負うことを選んだ。

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奇妙な事件が起きたとき、その現場で一体何が起こっているのか、こればかりは、結局のところ、行ってみないと分からない。いや、経験則から言えば、行ってみたところで、結局何も分からない場合だって多々ある。しかしそれならばそれで良い。この足でその事件の現場まで赴いてみる。そして得た答えがたとえ「分からない」であろうと、「分からない」ことが自分で「分かれ」ばそれは大きな発見なのだから(どんな優秀な検索エンジンも「それについては分からない」なんて気の利いた答えは決して言わないだろう)。

しかしまた最近では、UFOや超常現象を題材とした番組までやらせて頂いたり、あげくこんな本まで書かせて頂くにあたり、人から「UFO研究家」や「ミステリー・ハンター」のように思われて、困惑することもある。それはそのとりとめもないハッピーな肩書きゆえではなく、例えば人に、いきなりこんなことを聞かれるからだ。「宇宙人って本当にいるんですか?」「UFOって本当にあるんですか?」「雪男っているんですか?」「ヒトラーって生きてるんですか?」。

きっと矢追さんならば、ニコリと笑って「空を見上げてごらん」とでも言うのだろう。韮沢さんなら、質問を聞き終わらないうち、かぶせ気味でうなづいてくれるだろう。大槻教授ならば、「だからプラズ…」とでも言うのだろう。OK、それが確かにその道のプロフェッショナルというものだ。それが世間に期待される専門家の役回りというものだ。だけど私は、そんなとき、いつも答えをはぐらかしてきた。なぜなら、私もいまだにさっぱり分からないからだ。

分からないから、探しているのである。


X51.ORG THE ODYSSEY
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posted with amazlet at 08.12.17
佐藤 健寿
講談社

→ X51.ORG : 『X51.ORG THE ODYSSEY』刊行のお知らせ